出張講演では
江戸期以来のもぐさ製造業者として、更に詳しくお話をしています。
- 「もぐさがキレるって?」
- 「アヤに惚れるとどうなるの?」
- 「もぐさのコシは何処にあるの?」
- 「ゴマはどこで見つけられるの?」

無類七年晒
もぐさ屋がもぐさ屋と話をする際に用いる言葉。
世に言う業界用語がもぐさ屋にもあります。
「キレ」「アヤ」「コシ」「ゴマ」などのワードで情報交換を行っています。
この章では「アヤ」に関してのお話になります。
アヤ?
2019年3月18日のブログ記事。
「明治百五十年::商標登録継続記念證」
特許庁から明治150周年記念事業として商標登録継続記念証の発行を受け取りましたという内容です。
https://www.ibukimoxa.jp/blog/trademark/
もぐさを包装するのに用いいる和紙袋のデザインは江戸時代から。
令和の世の中になった今でも相も変わらずなお使い続けています。
学校さんで講演をする際にお持ちするリーフレット。
このデザインも「明治百五十年::商標登録継続記念證」とほぼ同じデザイン。
それが下の画像です。

江戸時代から使い続けている、もぐさを入れる和紙袋に描いたデザイン。
(リーフレットの為に“亀屋のお灸”の文字を追加しています。)
正式に採用された年月は不明ですが、1884年に「商標条例」が公布されほどなくして商標登録を済ませた様子です。
商標登録申請をするに際してパッケージデザインを作り替えた記載は残っておらず、従来のデザインをそのままに申請した模様です。
リーフレットの中には、赤色の二重線で囲まれた【無類七年晒】の文字が見受けられます。
赤いもぐさ
とある日にとある先生から(鍼灸師)のお電話でのご注文風景。
Kame あ~亀屋さん、久しぶり
Fukusuke ご無沙汰しています
Kame 注文したいんやけどな。
Fukusuke 前回と同じ家伝もぐさですね。
Kame あ~そうやねんけどな。そろそろ、もぐさ赤なってる?
Fukusuke 赤くですか?工場に聞いてから折り返します。(__)
———– 工場長へ確認中————- 聞き込み中———— 聞き込み完了———
Fukusuke お待たせしました。もぐさは赤くなってます。
Kame そしたら、送ってんか。
Fukusuke おおきに。有難うございます!!
無性に気にかかり。
後日、先生の治療院をお訪ねし。
Fukusuke 先日はご注文有難う御座います。
Kame 遠いところ。どないかしたんか?
Fukusuke ご挨拶がてらお尋ねしましたんと、赤いもぐさが気になりまして。
Kame ありがとう、赤なってたよ。
Fukusuke そうですか。その~…、先生は赤いもぐさがお好みですか?
Fukusuke 赤いもぐさはなにかあるんですか?
Kame あるよ~、赤いもぐさ知らんか?
Kame それこそ君ンとこの無類七年晒のことと違うんか?
Fukusuke 無類七年晒?
もぐさ屋業界用語として
無類七年晒
無類は他に類がない、比べようがないという意味から一番。
七年は日本人の好きな七。
親の七光りや七転び八起きなど、七にまつわる言葉は多くあります。
七転び八起きは、七回失敗して八回目に成功しました。
という意味ではなく、
何度も何度も失敗したけどその都度立ち上がり成功しました。
ということ。
具体的な数に限らず数の多いことを示す数字でもあります。
晒すは、光や風に当てること。
寒晒しなどと言います。寒さの中に衣服や食品を水や空気に置くこと、
時を経るという理解でよいはずです。
まとめると。
「もぐさは長い年月を経たモノが一番良いもぐさ」
と江戸時代の方は考えていた。
その言葉を弊社はもぐさを入れる紙袋のパッケジデザインとして書き記し、
今では誰も言わなくなった。
歴史を紐解くとそんなお灸用語だと私は考えています。
ただただ、知る人ぞ知る。
お灸治療の道具として
何故に先生は赤いもぐさを求めるのでしょうか?
我々はもぐさを製造する側で治療に関しては門外漢です。
先生曰く、
「お灸の火の当たりが絶対的に柔らかい」
とおっしゃいます。
A社、B社、C社の古いもぐさを並べ、古い順に火の当たりが柔らかいのかを調べよう。
そういううテイストではなく、
手に取った、もぐさが年代を重ねるうちにもぐさ自体が赤くなり一年目よりも二年目更には数年。
という事を比較して「お灸の火の当たりが絶対的に柔らかい」という事だと教えていただきました。

左側/数年前に製造したもぐさ
右側/令和06年01月に製造したもぐさ。
どちらのもぐさも製造工程等を等しく作業をしています。
(撮影時/令和08年06月。)
左のもぐさを赤い色のもぐさといいます。
『赤みがっかた黄色』
数年前に製造と書かれていますが、私が出張講演を開始した当初から持ち歩いているもぐさ。
現在では十数年程経過していると思います。
右側が近年に製造したもぐさ。
いわゆる、透熱灸用もぐさの色です。
製造当初(令和06年01月)の色合いは
『緑色っぽい黄色』
赤い色のもぐさも数年前に製造したもぐさも、すなわち透熱灸用もぐさは等しく、
仕上げ用唐箕から取り出した時(完成時)には緑色っぽい黄色のもぐさに仕上がります。
これは、原料を乾燥させはしますがヨモギ葉自体が緑色ですから
当然のことながら、緑色がっかた黄色に仕上がると考えられます。
ここまで読んでいただければ「アヤ」の正体がお分かりいただけたと思います。
アヤを漢字で書けば「彩」となり、もぐさの色合いを言い表す言葉になります。
色合いからもぐさの保存状態やもぐさの良し悪しを見極めようと考えたわけです。
だからその先生は赤いもぐさをお求めだった。
「もぐさの色が赤いもぐさは透熱灸を施す際には必要な条件の一つになる」
というわけです。
弊社ではもぐさのアヤが出るまで大切にもぐさをもぐさ蔵で寝かせます。
日本の文化
もぐさは時間を経ると赤みがかってきます。
他の業界ではどうなのでしょう?
食品と食文化
日本の食文化は寝かすもしくは熟成させることを大切にしている食材を多く見受けます。
魚や味噌、お酒などもそうです。アルコールは古酒などと呼ばれ熱烈な愛飲家もおられます。
これらは食材のうま味を最大限に引き出す方法の一つです。
魚を数日から数週間かけて寝かせることで、タンパク質が分解されてアミノ酸(旨味成分)へと変化し魚をより美味しく味わうことが出来ると解明されています。近年では流通技術の進歩により、数十年前には手に出来なかった新鮮な魚を入手する事が可能になりました。新鮮な寿司ネタを味わうことが出来る。技術革新は大きな喜びをお客さんにもたらします。ただこの技術進歩によりお寿司屋さんでは魚の熟成期間を改めて見直す作業が進めれれているという報道を聞いた時には少し可笑しみを感じました。
木材と建築文化
日本建築は、多湿や地震といった日本の気候風土に適応しながら独自の進化を遂げた文化です。
木造建築、木製家具や木製調度品など枚挙にいとまがありません。
日本の木造建築は美しい。
そのヒントの一つに天然木材の経年変化が挙げられます。
日本人に馴染み深いヒノキも経年変化により「あめ色」になってきたなどと表現されます。
この経年変化を引き起こす木材の抽出成分としてタンニン(渋み成分)が考えられます。
木材に約5%ほど含まれる成分で、酸化することで美しい濃い茶色やあめ色に変化します。
また、アミノ酸は光や熱によって糖と反応し、褐色化を引き起こします。
メイラード反応に似た現象が起きるみたいです。
メイラード反応とは、
食材に含まれるアミノ酸(タンパク質)と還元糖が加熱によって結びつき、褐色物質(メラノイジン)や香ばしい風味成分を生み出す化学反応です。肉の焼き色、パンのトースト、コーヒーの焙煎など、料理を美味しくする重要な役割を担っています。-AI検索
後半へ続く





