もぐさはお灸を据える時に用いる消耗品です。
原料はヨモギになります。
ヨモギは日本薬局方では艾葉(ガイヨウ)として収載されています。
医療用医薬品の薬効分類効果が記されています。すなわちお薬です。
ただ、もぐさの原料はヨモギで有る為に医薬品としてはカテゴライズされません。
現代社会のように医学が発展する以前から民間療法のアイテムとして使われてきました。
もぐさが太古から民間療法として多くの人たちに重宝されてきた要因としては、
お灸を据えた時の心地よさや灸治による治療効果そして原料を入手する容易さなどが挙げられます。
もぐさの選び方

もぐさ選びのヒントが有れば教えて欲しいな~

それ、大切!!

まず、お灸を直接肌の上に据えるのか?間接的に温める目的でお灸をするのか?この出発点をハッキリと意識する事から始まります。

直接灸用のもぐさと間接灸用のもぐさってことですね。

そう。直接灸なら4種類、間接灸なら5種類あります。

お値段が高い方がやはり治療効果も高いのですか?

一概にそうとも限りません。現状の症状に適したもぐさで灸治を施すことが大切です。もぐさはすべてヨモギが原料ですから!!

原料となるヨモギからもぐさとして製造出来る量でもぐさの価格は基本的に決まります。精製度が高いと価格は高くなり、低いとお手頃な価格となります。また、精製度合いの高いもぐさ程火の当たりが優しく、(火の)点きが早く素早く燃え尽きます。

よく分からない時や迷ったときは問い合わせても?

お気軽にお願いします。

ここまで分かれば大丈夫?

大丈夫です。
更に詳しく深く知りたい方は続きをどうぞ。
技術の継承
施灸は家庭の医学としてそして民間療法としての立ち位置が長きに渡り現代にも引き継がれてきています。
またお灸文化としてのもぐさ製造も進化を続けてきています。
Kame君とFukusukeさんの会話はお電話で大変によく頂く内容です。
二人の会話は「もぐさ」が身近な存在として個人またご家庭から徐々に認識されなくなってきている事を伺わせるお問合せ内容だと推測しています。
会社の古株に聞いてみると昭和から平成に時代が移る頃から徐々に増えてきたお問い合わせだと言ってます。
事実としてお伝え出来ることは、どの時代もよもぎを原料としてもぐさを製造し技術を継承している事です。
もぐさ製造の概略
もぐさを製造するには、
下に記した4大工程を経ればもぐさを作る事は出来ます。
ただし、製造するもぐさの種類により製造方法や製造工程また製品の仕上がり状態も異なります。
- 原料(ヨモギ)の収穫
- 原料(ヨモギ)の乾燥
- 原料(ヨモギ)の臼引き工程
- 原料(ヨモギ)の精製工程
もぐさの価格はどのように算出されるのか?
もぐさの価格を算出する根本は使用する原料(よもぎの葉)から商品(もぐさ)がどれくらいの量を生産出来るのかという点です。
これを弊社では分戻り率と言っています。
もぐさは直接お灸をする際に用いる点灸(透熱灸)用もぐさと温める事を主な用途として使用する温灸(隔物灸)用もぐさの二種類に大別出来ます。
透熱灸用のもぐさと温灸用のもぐさを比較すると
透熱灸用のもぐさは精製度が高くそのため原価費が高くなります。
例えば10kgの乾燥よもぎ葉から5kgのもぐさを製造する時の生産コストと1kgのもぐさを製造する時の生産コストを比較してみれば一目瞭然です。
国産よもぎと中国産よもぎを比較すると
またもぐさの原料となるよもぎも国産よもぎと中国産よもぎでは価格が違います。
皆様のご想像とおり国産よもぎの方が中国産よもぎよりも価格が高くなります。
透熱灸用のもぐさは国産よもぎが、温灸用もぐさは中国産よもぎが製造するには適しています (生産者としての言い分が含まれているかもしれませんが)。仮に3%の分戻り率のもぐさと10%の分戻り率のもぐさが目の前にあるとして、治療効果が高いと思われるもぐさはどちらだか分かりますか?
そもそも元は同じよもぎ葉なのです。透熱灸用もぐさ最高級品位の「家伝もぐさ」と最もお値打ちな温灸もぐさ「荒挽き温灸竹印」
どちらのもぐさも原料はよもぎです
生産性を比較すると
もぐさの原料であるヨモギは、キク科植物のアルテミシア(Artemisia)に属し、
- アルテミシア・アルギィ (A.argyi)
- アルテミシア・プリンセプス (A.princeps)
- アルテミシア・ブルガリス (A.vulgaris)
- アルテミシア・モンタナ (A.Montana)
- …etc.
一口にヨモギと言っても非常に多くの種類に細分化されるみたいです。
日本国内ですら三十数種類のヨモギがあり、小川を挟んで右と左ではヨモギの種類が違うなどと言う話は珍しくありません。
もぐさの原料に適したヨモギとして大ヨモギが挙げられますが、実際のところある特定の品種のヨモギだけを選別してもぐさを製造する事は有りませんし、原料を収穫する際にそこまで事細かに収穫する事はほぼ不可能です。
ただ弊社の場合、中国産のヨモギは生薬屋さんと呼ばれる業種の方にお願いをして原料を仕入れている為に国産のヨモギと中国産のヨモギを分別しもぐさを製造する事は可能です。
透熱灸用もぐさと温灸用もぐさの製造工程を異なる作業としてこなす事ができる理由でもあります。
ただお恥ずかしい話ですが、原料となるヨモギの学術名や種類などの知識は皆無で、葉先が丸いや茎が赤いなど特性を掴んでいる程度です。
透熱用もぐさを製造する工程と温灸用もぐさを製造する工程は、一定の工程迄はほぼ同じ技術を用います。
温灸用もぐさを製造した後に透熱灸用もぐさの工程を行います。そして温灸用もぐさを製造する工程よりも複雑で手間と時間を掛け何度も精製作業を繰り返し行います。
国産ヨモギを原料に使用した場合と、中国産ヨモギを原料に使用した場合、
温灸用もぐさ製造工程までの分戻り率は中国産ヨモギの方が優勢で、更に直接灸用もぐさの製造工程まで進めると国産ヨモギが圧倒的に逆転します。
国産ヨモギも中国産ヨモギも大雑把にはArtemisiaです。
それでもなおそのヨモギがアルテミシア・アルギィなのかアルテミシア・プリンセプスなのか…etc.。温灸用もぐさの原料と点灸用もぐさの原料が異なる種類のヨモギだと認識できれば、Kame君の質問にも経験則+少しだけのエビデンスを加えてお話しが出来るかもしれません。

お薦めは? ウチの店は何だってお薦めだよwoman dr.
店主
一見のお店での会話に近いかもしれませんが、
どの時代もよもぎを原料としてもぐさを製造をしているにも関わらず粗悪もぐさの表現はいただけません。
どのもぐさ製造メーカーも「粗悪もぐさ」などは作ってはいません!!
よもぎからもぐさ
もぐさはよもぎを原料とし製造している事は分かって頂けたと思います。
またもぐさの価格と施灸効果が必ずしも比例している訳でない事もなんとなくご理解いただけたと思います。
人様の前でゴルフのスコアーを口にした事のない私の例え話で誠に恐縮ですが、「もぐさの上手な選び方」はゴルフ場でのクラブ選びに似ているかもしれません。
飛距離や方向などを考えれなければどのクラブを選択してもボールを打つことは可能です。
しかしそのホールその局面に適切なクラブ、出来ることならベターよりもベストなクラブをチョイスしてスイングしたいという思いは全てのゴルファーが認めるところです。
もぐさ選びに話を戻せば、
直接肌の上にもぐさをのせてお灸をするのか?
肌の上に直接にはもぐさをのぜずお灸をしたいのか?
大きな選択です。
と言うのも、 先程述べた通りこれはもぐさを製造するうえでも明確に作業工程が違うからです。
同じもぐさでも燃焼温度も燃焼時間も違う「もぐさ」になります。
直接灸と間接灸
直接灸と間接灸はどちらの治療効果が高いのか?
プロの指導のもとでお灸を行っている方なら確実に直接灸です。
ただ火傷をするリスクを背負っているだけに初心者には壁が高いかもしれませんが的確な灸治となります。
直接灸をされる場合のもぐさ選びは?
もぐさの精製度合いです。
もぐさに火を点け燃え尽きるまでの一定の速さや熱感は、精製度合いに比例します。
不純物が少ないもぐさ程治療効果が高いという見解は殊更間違いではないのです。
お灸治療で有名な先生方の多くは精製度の高いもぐさを購入される傾向が顕著です。
精製度の高いもぐさとはよもぎの葉の裏にある白い毛(毛茸)だけを丹念に抽出したもぐさという事です。
灸法にもよりますが透熱灸(直接肌の上にもぐさをのせてのお灸)は、もぐさを必要量だけひねり使用するスタイルが現在では一般的です。
透熱灸(直接肌の上にもぐさをのせてのお灸)は火力をコントロールする事で治療効果をあげています。
これは一定の時間で一定の熱量を加え治療効果を確認する事が重要だからだとお聞きしたことが有ります。もぐさに不純物(乾燥よもぎ葉にある毛茸以外の部分)が混ざっていると、一定の時間に一定の熱量を加える火力のコントロールにブレが生じます。
このブレを抑えるため透熱治療に使用するもぐさは精製度の高いもぐさとなります。
勿論、精製度の高いもぐさ(=不純物が少ないもぐさ)程、価格も高くなります。
精製度合と価格は比例します。
直接灸で使用するもぐさは、精製度の高いもぐさです。
鍼灸院や治療院へご相談
弊社の場合、ご自身で直接灸(直接肌の上にもぐさをのせてのお灸)を始める前に一度ご近所の鍼灸院や治療院へご相談される事をお薦めしています。
直接灸を施す場合はやはりもぐさの精製度は高くなけばなりません。
今回の動画でご使用頂いた「家伝もぐさ」は弊社の点灸もぐさの中で最も精製度の高いもぐさです。
頭のテッペンにお灸をします。
不眠でお悩みに方には適応した施灸方法です。
施術者は鍼灸師の国家資格を取得した有資格者であり、
施灸に不慣れな方は絶対に真似をせず鍼灸院または治療院へ足をお運びください。
↑↑↑ 治療風景に関しての詳しい記事は:お灸を頭のテッペンに ↑↑↑
間接灸の治療効果は薄いのか?
決してそんなことも有りません。
施灸方法が違うために二つの灸法を並列にし比較することは出来ませんが、ゴールはどちらも体のケア及び治癒です。
高い山に登る二つのパティーが同じ登山口にいるとします。
経験豊富な熟練者そろいのパーティは、激しく険しい山道でも多くの経験と知識で最短のルートを見つけ山を登りきることが出来ます。
でも山登りを始めたばかりの登山者でも迂回ルートを選択し時間を掛け長い距離を歩けば登頂に成功するはずです。
継続は力なり!!なのです。
灸頭鍼用もぐさ
間接灸用のもぐさには、鍼の柄にもぐさを付けお灸をする灸頭鍼用もぐさがあります。
この施灸方法の場合は鍼柄に付けたもぐさが割れないようにネバリのあるもぐさが求められます。
もぐさのネバリはある一定の精製度が求められます。
精製し過ぎると価格に転嫁されますし、精製度が低いとネバリが出ません。
もぐさ製造の中では稀有な存在です。
灸頭鍼用のもぐさキャップなども販売されているために併用される鍼灸師もおられます。
例外なく灸頭鍼治療は鍼灸師の国家資格を有した者のみが行える施灸方法です。
燃焼温度と燃焼時間
温灸用もぐさの燃焼温度と燃焼時間は比例します。
原料のよもぎに近い形のもぐさ程燃焼温度が高く燃焼時間も長くなります。
くすぶるように燃え続けるという表現が当てはまると思います。
透熱灸用のもぐさと比較してもお灸に使用する一回のもぐさ量が多い為に購入コストは重要なポイントになると思います。
弊社で一番粗く精製している「荒挽き温灸竹印」は燃焼温度が高く燃焼時間も長い為に、畜産農家を経営されておられる方にもご購入頂いています。
直接灸用のもぐさ?間接灸用のもぐさ?
どの灸法?
どの症状にはどの灸治を施すのか?
透熱治療をするのか?温灸治療をするのか?
そのためのもぐさはどのもぐさをチョイスするのか?
治療費用と商品購入価格の整合性はとれているのか?
ボディーメンテナンス以外にもご自身のお財布とのメンテナンスにも臨まなければなりません。
だから、弊社は点灸用もぐさ4種類、温灸用もぐさ5種類の合計9種類の商材をご用意させて頂いています。
弊社ではご相談を頂ければ、その時々の状況や環境に則したもぐさをご提案致します。
- 「もぐさがキレるって?」
- 「アヤに惚れるとどうなるの?」
- 「もぐさのコシは何処にあるの?」
- 「ゴマはどこで見つけられるの?」
学校教材としてお使いいただいているもぐさのご相談も承っています。
お灸の使い方

お灸に使用するもぐさの選び方は分かりました。
次は実際にお灸に挑戦してみようと思うのですが。

もぐさの選び方でも説明をした通り、直接灸なのか間接灸なのか。
それぞれを解説していきます。灸法ともぐさ選びはリンクします
弊社はもぐさを製造・販売する会社で有る為に、 お灸はもぐさを燃やして施灸を行う事とを前提としています。 限定する事で、ユーザー様に提案する商材がシンプルになります。 灸法ともぐさ選びはリンクします。 また、灸法ともぐさ選 …
もぐさ文化からお灸文化へ
Kame君とFukusukeさんの会話を更に読み解きます。
二人の会話は「もぐさ」が身近な存在として個人またご家庭から徐々に認識されなくなってきている事を伺わせる内容ではないかと推測される事は既に書き記しました。
もぐさをひねる
少し悲しい思いがありますが、それは施灸が「もぐさ」をひねりすえる行為から台紙にのせた「お灸」のタイプに変わってきたのだとも推測しています。
そこにはもぐさのチョイスは有りません。もぐさを原料にお灸商材を製造した商品の出現です。
より手軽でより簡便である事を時代が求めた結果です。
言い換えれば「もぐさ」が世の中から忘れ去られようとしていたかもしれない時代に手軽さが手を差し伸べ「お灸」という言葉が土俵際で時代に踏みとどまったのではないかと改めて認識しています。
直接灸であって間接灸のような柔らかい温度の施灸方法が「八分灸」です。
直接灸と間接灸のいいとこどり灸法です。
八分灸の据え方
直接灸でありながら、熱さを最小限にしたのが「八分灸」です。
お灸を上手にすえるコツは、熱さを無理に我慢しないことです。
↑↑↑プロでなくても効果大、ご家庭でも出来る直接灸 ↑↑↑
ご家庭でも出来る間接灸
先日、ダルビッシュ投手のSNS投稿を拝見しました。
弊社は「もぐさ製造」に主眼を置き社会との接点を模索しています。
残念ながら話題の火を使わないお灸を製造していません。
でも「お灸」というワードが世の中に一歩浸透した気持ちになりました。
台紙付のお灸が更に簡便化した模様です。
ただ、火を点けるお灸とはタイプが異なります。
当然に熱感の持続時間と熱感が違います。
台紙付お灸広重
台紙付のお灸は多くのメーカーさんから発売されています。
弊社の商材は「台紙付お灸広重」になります。
- パッケージは歌川広重の木曽海街道六拾九次之内柏原を採用しています。
- もぐさ部分はもぐさ屋らしく直接お灸をする時に使用する透熱灸用もぐさを使用しています。
点灸用もぐさを使用する事により
- 火を点けた時に立ち上る精製度の高いもぐさ特有の香り
- 火を点けた時の熱感の持続時間が他社さんとは異なります。
ご家庭でのセルフケアにご使用ください。
もぐさ部分に透熱灸用のもぐさを使用することによりお灸特有の心地の良い熱感を実感できます。
熱感の異なるレギュラータイプとソフトタイプの2種類をご準備しています。
ビギナーの方や東日本の方はソフトタイプを
お灸好きの方や西日本の方はレギュラータイプを選ばれる傾向にあります。
(当社の購買動向比較より)
どちらのタイプも熱さを強く感じた時は取り外して下さい。
台紙付きお灸広重
もぐさ部分に透熱灸用のもぐさを使用することにより
お灸特有の心地の良い熱感を実感できます。
↑↑↑ 台紙付お灸の使い方↑↑↑
棒灸ぬくもり
透熱灸用のもぐさを使用し直接灸のような熱感の再現を目指す「台紙付お灸広重」に対して温灸用のもぐさを使用しポカポカと心地よい温灸治療の再現を目指す「棒灸ぬくもり」。台紙付のお灸と比較して施術個所をより大きな面で温める事ができます。琵琶の葉温灸などは同じカテゴリーの商材です。棒灸と施灸箇所の間に琵琶の葉を敷くと琵琶の葉灸と呼ばれる灸法になります。
ご使用方法
- 1.患部にタオル(手拭)と新聞をあて、その上から棒灸(お灸)を患部に押し当てます。
- 2.熱さを感じた時点で施灸を終了し、他の患部に移ります。
ポカポカとした温かさが癖になります。肩こり解消にこの一本!!枇杷の葉灸もこの要領で。
省エネの医学
余談になります。
もぐさを使いお灸をする事で思わぬ気付きがあります。
現代社会は何事においても環境との関係が注目される時代です。
以前は「医療は命にかかわる事象なので環境問題とは別物」だという認識が長くなされてきました。
カーボンニュートラル
しかし、菅義偉首相は令和02年10月26日に開会した臨時国会の所信表明演説で、国内の温暖化ガスの排出を2050年までに「実質ゼロ」とする方針を表明しました。
各紙紙面を賑わせた「2050年カーボンニュートラル宣言」。
カーボンニュートラルとはCO2やメタンなどの温暖化ガス排出量を、森林吸収や排出量取引などで吸収される量を差し引いて全体としてゼロにすることらしいのですが、これは日本どころか世界中が取り組むべき環境問題として提唱されています。
天産物としてのもぐさ
お灸の原料は自然界に自生しているよもぎです。
こう考えれば、お灸は環境にもとても優しい医療だということがお分かりいただけると思います。
お灸をする事で、
知らず知らずのうちにご自身の自然治癒力を高め
知らず知らずのうちに環境意識の高い治療を選択しているのです。
2020年11月12日に公開したブログ記事を基に加筆しました。